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電子ピアノの弊害

日本では、住宅事情や騒音問題等でピアノが置けない家庭が多い。幸い、当教室の子供の生徒さんのほとんどはアップライトピアノを置いているが、一部のお子さんと、大人の生徒さんのほとんどが電子ピアノ使用者である。それは仕方ないものの、やはりピアノを持っている生徒さんと比べると、上達の違いはどうしても生じてしまう。(ピアノであっても、練習しない生徒さんは勿論、上達しないのだが。)


電子ピアノもピアノの楽器であると思い、電子ピアノはピアノではないことをご存知でない方が非常に多い。これを聞くとびっくりされる方がいるかもしれないが、電子ピアノとピアノはそもそも音の出し方の構造が全く違うので、全く別の楽器と思って頂いた方がいい。本来、電子ピアノは、キーボードの部類に入るものなので、電子”ピアノ”と呼ぶこと自体が間違っている。

電子ピアノは音をあらかじめデジタル録音したものが内蔵されているので、上手な人が弾いても下手な人が弾いても音がきれいに聞こえる。ところが、本来のピアノの音は、弾いている人自身によって音が作り出され、その人の弾き方によって音が汚くなったり、きれいな美しい音になったりする。従って、ピアノというものは耳を良く澄ませてきれいな音作りから始めるので、耳の訓練ができるのだが、電子ピアノは録音されたきれいな音しか出ないので、耳の訓練や繊細な音作りには全く向いていないのである。

また、本来のピアノでも、グランドピアノと縦型のアップライトピアノにも実は大きな違いがある。アップライトピアノは本来の生ピアノではなく、そもそも住宅事情が狭い家の為に後から開発されたもの。音の出す原理は、グランドピアノと同じだが、ハンマーが縦に伸びているという点から、これもまたグランドピアノとは違い、表現上、どうしても限界が生じるし、また、右にあるダンパーペダル以外のペダルの構造も違う。従って、幅広い表現力や繊細なテクニックやタッチ、音色を出すには、断然、グランドピアノの方が上である。

しかし、ピアノ初心者は、まずはしっかりした指と音を作るため、アップライトピアノで十分である。上級レベルに行くに従って、アップライトピアノでは物足りないと思う時期が来ると思うが、中級レベルまでなら、アップライトピアノで十分である。

電子ピアノについては、私は何度も試弾したことが何度もあるが、鍵盤がふかふかなのだ。グランドピアノのタッチとは歴然とした差があり、これでは何年、電子ピアノで練習しても指が強くならない。指が強くならないばかりか、悪い弾き癖も治りにくく、テクニックを習得するにも時間がかかる。最新の、グランドピアノのタッチに近い高級な電子ピアノでは、確かに、安い電子ピアノよりはタッチも音も格段に良いのだが、グランドピアノとはやはり違う。電子ピアノは、所詮、電子ピアノなのだ。

先日、5歳の息子さんがいる友人宅へ遊びにいった。その友人もピアノを弾き、自宅にグランドピアノが置いてあるが、その息子さんもピアノを習っているので、早速聴かせてもらった。驚いたのが、まだ5歳なのに、指の関節が既にしっかりしていて、子供によくありがちな第一関節をつぶして弾くという現象が全く見られなかったのだ。5歳だと、まだグランドピアノでしっかりした音を出すのが難しいのだが、この息子さんは毎日グランドピアノに触れているせいなのか、5歳とは思えない、しっかりした音も出せる。

アップライトピアノとグランドピアノでも差があるのに、電子ピアノとグランドピアノは雲泥の差、なのだ。弾きやすく、誰が弾いてもきれいな音がでる電子ピアノでは、タッチも安定しないし、音の粒が揃わなかったり、微妙な音色を聴き分けることもできない。また、グランドピアノが弾きづらく感じるので、余計な所に力を入れて弾きがちで、それがまた悪い癖となり、脱力をして弾くということが難しくなる。

 

電子ピアノ保有者のお子さんに対しては、こちらもなんとか指を強くしてもらうよう工夫をしており、5歳のお子さんでもグランドピアノでしっかり音が出せるようになる、などそれなりの成果が上がっている。しかし、先々、色々なテクニックを習得する上で弊害になることは避けられないことで、その場合は、アップライトピアノに切り替えるように勧めている。

住宅環境上、ピアノが置けないのは致し方ないことだが、電子ピアノはピアノではない、という事と、これらの弊害を踏まえた上で、今後、ピアノを購入される方、またはピアノを習われる方は慎重に考慮頂きたいと思う。

| ピアノ・英語・音楽全般 | 10:14 | comments(0) | - | pookmark |
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